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昨今、ゼロトラストというセキュリティアプローチが、中小企業のセキュリティ担当者を中心に多くの注目を集めています。”信用しない”というコンセプトのもと、すべてのユーザーやデバイスを最初から不信任と見なすこのアプローチは、現代のサイバーセキュリティの環境において非常に有効です。
しかし、実際にゼロトラストを取り入れる際には、どの製品を選べば良いのか、その基本的な概念や機能について十分に理解する必要があります。本記事では、厳選したゼロトラスト製品を3つ紹介し、その基本概念から搭載機能までを徹底的に解説し、セキュリティ担当者がより確かな判断を下すための情報を提供いたします。
ゼロトラストとは?
ゼロトラストは、ネットワークセキュリティの一つのモデルで、企業や組織が自身の情報システムを保護するためのアプローチを指します。
従来のアプローチでは、信頼された内部ネットワークと外部ネットワークを区別していましたが、ゼロトラストではその考え方を覆し、すべてのアクセス要求に対して信頼を疑うという基本原則に立ち戻ります。
ゼロトラストアーキテクチャーの3つの特徴
ゼロトラストアーキテクチャーは、近年セキュリティ業界で注目を集める重要なアプローチです。従来のネットワークセキュリティの枠組みを超え、信頼性を前提とするのではなく、すべてのアクセス要求を厳密に検証することで、より高度なセキュリティを実現します。
“信用しないこと”が原理原則
ゼロトラストアーキテクチャーは、ユーザーやデバイスに対して事前の信頼を置かないという考え方に基づいています。これは、セキュリティ上の最も重要なコンセプトであり、従来のセキュリティモデルとは大きく異なる点です。
最小特権の原則
ゼロトラストアーキテクチャーでは、ユーザーやデバイスには必要最低限の権限しか与えません。
これにより、攻撃者が特権を悪用するリスクを軽減し、セキュリティを向上させます。
継続的な監視と分析
ゼロトラストは、セキュリティの状況を常に監視し、異常なアクティビティを検知することが重要です。
継続的な監視と分析により、セキュリティインシデントを早期に発見し、迅速に対応できます。
ゼロトラスト製品の機能
ゼロトラスト製品は、モダンなセキュリティ課題に対処するための強力なツールです。ではそれらの製品が備える機能にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは具体的なゼロトラスト製品の特徴を5つほど解説します。
ユーザー認証
ゼロトラスト製品は、ユーザーのアイデンティティを確認するための認証手段を提供します。この機能はパスワードや多要素認証などを活用して、ユーザーが本物であることを確認し、これにより、不正アクセスを防ぎ、ユーザーの身元を保護します。
デバイス認証
ゼロトラストでは、アクセスしようとするデバイスの認証の機能を提供します。
デバイスのセキュリティ状態や更新状況を評価し、信頼できるデバイスのみがアクセスを許可されます。これにより、セキュリティを強化し、不正なデバイスからのアクセスを防ぎます。
データ暗号化
ゼロトラスト製品は、データの保護にも重点を置いています。
データを暗号化して保存や転送を行い、データ漏洩のリスクを最小限に抑えます。暗号化されたデータは不正なアクセス者にとっても解読が難しく、データセキュリティを確保します。
アクセス制御
ゼロトラスト製品では、ユーザーがどのリソースにアクセスできるかを厳密に制御します。ユーザーの役職や所属部署、データの分類などに基づいて、必要な権限を与えることで、情報漏洩や権限の濫用を防ぎます。
ログ監視
ゼロトラスト製品は、アクセスログやイベントログを収集して監視するログ監視も機能として有しています。
不審なアクティビティやセキュリティインシデントを早期に検知し、迅速な対応を可能にします。また、ログはセキュリティインシデントの調査やアクセス履歴の確認にも役立ちます。
ゼロトラストの種類
ゼロトラストは、セキュリティの観点から異なるアプローチがあり、いくつかの種類が存在します。それぞれの種類には特有の特徴と適用範囲があります。ここでは、主なゼロトラストの種類について解説します。
ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)
ゼロトラストネットワークは、従来のVPN(Virtual Private Network)を置き換える形で提供されるアプローチです。
この機能ではユーザーやデバイスは、リソースに直接アクセスせず、クラウドベースのゲートウェイを介してリソースにアクセスします。ZTNAは、アプリケーションベースのアクセス制御を行い、必要なユーザーやデバイスにのみリソースへのアクセスを許可します。
セキュアアクセスサービスエッジ(SASE)
セキュアアクセスサービスエッジ(SASE)は、セキュリティとネットワークの概念を統合する新しいアプローチです。
従来は、セキュリティとネットワークは別々に考えられていましたが、SASEではこれらを一体化させることで、クラウド時代に求められる高度なセキュリティと柔軟なネットワークアクセスを実現します。
SASEについてもっと詳しく知りたいと言う方はこの記事もご覧ください。
データ損失防止(DLP)
データ損失防止(DLP)は、セキュリティ上の重要な対策の一つであり、データ保護の観点から欠かせないものとなっています。
DLPの主な目的は、機密情報や個人データなどの重要なデータが組織外に漏洩することを防ぐことです。データ漏洩は企業に深刻なリスクをもたらし、信頼性や評判を損なう可能性があります。また、個人情報漏洩などのセキュリティインシデントによって法的な責任が生じることもあります。そのため、データ損失防止は組織にとって重要なセキュリティ課題となっています。
DLPにはいくつかの技術と手法が存在します。
コンテンツフィルタリング
コンテンツフィルタリングは、データを解析して特定のパターンやキーワードを検出し、機密情報が含まれる可能性のあるデータを特定します。例えば、クレジットカード番号や社会保障番号などのパーソナルデータを特定して保護することができます。
データ分類
データ分類は、データを重要度や機密性に応じて分類し、適切な保護措置を適用します。これにより、機密データが適切に取り扱われ、リスクを軽減します。
アクセス制御
アクセス制御は、データへのアクセス権限を制御する手法です。必要なユーザーのみが特定のデータにアクセスできるようにし、不正なアクセスを防止します。
アイデンティティとアクセス管理(IAM)
アイデンティティとアクセス管理(IAM)は、組織において重要なセキュリティ対策として不可欠な役割を果たしています。IAMの主な役割は、ユーザーやデバイスのアイデンティティを確認し、それに基づいて適切なアクセス制御を行うことです。組織内の機密情報や重要なリソースへのアクセスは、必要な人やデバイスに限定される必要があります。
IAMは、不正なアクセスや権限の濫用、情報漏洩を防止し、組織のセキュリティを強化します。また、最小特権の原則に基づいて必要な権限のみを付与することで、セキュリティリスクを最小限に抑えます。
エンドポイント検出および応答(EDR)
エンドポイント検出および応答(EDR)は、セキュリティにおいて重要な役割を果たす技術であり、エンドポイントセキュリティの強化に寄与しています。
EDRの主な目的は、エンドポイント(例:パソコン、スマートフォン、サーバーなど)に対する攻撃を早期に検出し、適切に対応することです。エンドポイントはネットワーク内で最も攻撃の対象とされる箇所であり、セキュリティリスクが高まります。
EDRはエンドポイント上の異常な挙動や脅威をリアルタイムで検知し、迅速かつ正確な対応を行うことで、被害を最小限に抑える役割を果たします。
ゼロトラスト製品の比較
ゼロトラスト製品は、セキュリティにおいて重要な役割を果たす製品群です。それぞれの製品には特徴や利点がありますが、同時にデメリットも存在します。ここでは、いくつかのゼロトラスト製品の比較を通して、読者に理解しやすく説明します。
Zscaler
Zscalerは、クラウドセキュリティの分野で知られる企業であり、多くのメリットを提供していますが、同時にいくつかのデメリットもあります。ここでは、Zscalerの主な特徴とメリット、さらにデメリットについて詳しく解説します。
初期費用 | 無料 |
月額費用 | Zscaler Internet Access (ZIA): $0.15/ユーザー/月 Zscaler Private Access (ZPA): $0.50/ユーザー/月 Zscaler Cloud Security Posture Management (CSPM): $0.10/ユーザー/月 Zscaler Cloud Workload Protection (CWPP): $0.25/ユーザー/月 |
サポート体制 | 24時間365日サポート 電話サポート メールサポート チャットサポート ドキュメントサポート |
機能 | ゼロトラストセキュリティ ウェブセキュリティ クラウドセキュリティ データ保護 アクセス制御 ログ分析監査 |
・ゼロトラストセキュリティ:「信頼性の強化」でセキュアな環境を提供
・ウェブセキュリティ:「Webフィルタリング」で脅威から保護
・クラウドセキュリティ:「クラウド保護」でデータを安全に保つ
メリット 1|コストの削減
Zscalerはオンプレミスのセキュリティインフラの代わりにクラウドを利用するため、運用コストを削減することができます。物理的なハードウェアの購入やメンテナンスの負担が軽減され、経済的なメリットを享受できます。
メリット 2|クラウドベースのアプリケーションやモバイルデバイスを保護
クラウドベースのアプリケーションやサービスが増加する中、Zscalerはクラウドアプリケーションへのセキュリティを提供します。ユーザーはオンラインで安全に業務を行うことができ、生産性の向上に寄与します。
モバイルワーカーが増加する現代のビジネス環境では、モバイルデバイスのセキュリティが重要です。Zscalerはモバイルデバイスからのアクセスも保護し、セキュリティの拡張性を実現します。
デメリット 1|信頼性の低下
Zscalerはクラウドベースのサービスであるため、インターネット接続に依存します。インターネット接続が不安定な場合、サービスの信頼性が低下する可能性があります。適切なバックアップと冗長性の確保が必要です。
デメリット 2|カスタマイズ性の低下
クラウドベースのサービスは、オンプレミスのソリューションよりもカスタマイズ性が制約されることがあります。特定の要件に合わせたカスタム設定が難しい場合があるため、組織のニーズに完全に適合するか検討が必要です。
Cloudflare
Cloudflareは、ウェブサイトのセキュリティとパフォーマンスを向上させるためのクラウドサービスプロバイダーであり、多くのメリットを提供していますが、同時にいくつかのデメリットも考慮する必要があります。ここでは、Cloudflareの主な特徴とメリット、さらにデメリットについてわかりやすく解説します。
初期費用 | 無料 |
月額費用 | Free:無料Pro:$5/月 Business:$20/月 Enterprise:要問い合わせ |
サポート体制 | 24時間365日サポート 電話サポート メールサポート チャットサポート ドキュメントサポート |
機能 | コンテンツ配信ネットワーク (CDN) ウェブセキュリティ ウェブパフォーマンス ドメインネームシステム (DNS) ウェブアプリケーションファイアウォール (WAF) DDoS 保護 データ保護 アクセス制御 ログ分析監査 |
・ウェブアプリケーションファイアウォール (WAF):「Web攻撃防止」でアプリケーションを保護
・DDoS 保護:「攻撃阻止」でサーバーを守る
・データ保護:「情報の安全性確保」でデータを守る
メリット 1|コストが安価
Cloudflareは低コストで利用できるクラウドサービスの一つです。無料プランを提供しており、基本的なセキュリティ機能を手軽に導入することができます。これにより、中小企業や個人のウェブサイトでも手軽にセキュリティ対策を強化できます。
メリット 2|多くの機能を提供
Cloudflareは、ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)、DDoS攻撃対策、DNSサービスなど、幅広いセキュリティ機能を提供しています。さらに、キャッシュ機能やCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)によって、ウェブサイトのパフォーマンスも向上させます。
デメリット 1|有料のプランに加入する必要
Cloudflareの無料プランでは、一部の高度なセキュリティ機能やパフォーマンス向上機能が制限されています。これらの機能を利用するには有料プランへの加入が必要となります。組織の要件に応じてプランを選定することが重要です。
デメリット 2|カスタマイズ性が低い
Cloudflareはクラウドサービスであるため、完全なカスタマイズ性はオンプレミスのソリューションに比べて制約されることがあります。一部の要件に対応できない場合があるため、導入前に十分な検討が必要です。
Fortinet
Fortinetは、ネットワークセキュリティおよびサイバーセキュリティソリューションを提供する企業であり、従来の境界型セキュリティよりも多くのメリットを持っていますが、同時にいくつかのデメリットもあります。以下では、Fortinetの主な特徴とメリット、さらにデメリットについて、初心者にもわかりやすく解説します。
初期費用 | 要問い合わせ |
月額費用 | 要問い合わせ |
サポート体制 | 24時間365日サポート 電話サポート メールサポート チャットサポート ドキュメントサポート |
機能 | 次世代ファイアウォール (NGFW) 統合脅威管理 (UTM) ウェブアプリケーションファイアウォール (WAF) データ漏洩防止 (DLP) エンドポイントセキュリティ クラウドセキュリティ ネットワーク制御 ログ分析監査 |
・次世代ファイアウォール (NGFW):「高度な脅威対策」でネットワークを保護
・統合脅威管理 (UTM):「一元管理」で複数の脅威に対応
・ウェブアプリケーションファイアウォール (WAF):「Web攻撃対策」でアプリケーションを保護
メリット 1|従来の境界型セキュリティよりもセキュリティを強化
Fortinetは包括的なセキュリティ製品を提供するため、従来の境界型セキュリティに比べてセキュリティを強化できます。ネットワークレベルからエンドポイントまで、幅広い領域でセキュリティを確保し、様々な脅威に対抗します。
メリット 2|テレワークやBYODなどの新しい働き方に対応
近年、テレワークやBYOD(Bring Your Own Device)などの新しい働き方が増えています。Fortinetはこれらの新たな環境に適応し、リモートアクセスのセキュリティやモバイルデバイスの保護を効果的に実現します。
デメリット 1|導入・運用が複雑
Fortinetの製品は機能が豊富であり、複雑なセキュリティポリシーや設定をカスタマイズすることが可能ですが、その一方で初めて利用する場合は導入や運用が複雑に感じるかもしれません。十分なトレーニングやサポート体制を整えることが重要です。
ゼロトラストの概念を理解し正しいゼロトラストの運用を!
ゼロトラストは包括的で革新的なセキュリティモデルであり、信頼を前提としない厳格なアクセス制御により、現代の複雑なセキュリティリスクに対処します。これにより、企業はより安全かつ効率的な業務環境を構築し、セキュリティレベルの向上に寄与します。
しかしながら適切なゼロトラストの理解なくして、盤石のゼロトラスト運用は困難だと言えます。ぜひこの記事をお読みいただきゼロトラストへの理解を深めていただけますと幸いです。